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注意欠陥多動性障害の原因は内分泌かく乱物質?

 産業技術総合研究所ヒューマンストレスシグナル研究センターと国立環境研究所は、生後5日目に脳内にビスフェノールAなどの内分泌かく乱化学物質を投与されたラットは、4、5週齢に成長した時に通常のラットに比べて行動に落ち着きがなくなることを確認した。ラットの4、5週齢は、人間では小学生程度の時期に当たるという。

 ヒトでは、行動の落ち着きのなさ(多動性)を示す疾患として、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症などの広汎性発達障害(PDD)がある。これらの疾患の患者にドーパミンの神経への取り込みを阻害する作用を持つリタリンを投与すると、多動傾向を抑制できることが知られている。そこで研究チームは、ドーパミン神経の発達に化学物質が及ぼす影響に注目して研究を進めた。

 ビスフェノールA、0.2マイクログラムを生後5日目のラット(体重約10g)に投与したところ、ラットは4から5週齢に成長した時に、投与しないラットに比べ自発運動が増えて落ち着きがなくなっていた。他のフェノール類、フタル酸エステル類の化合物を投与した場合にも多動の傾向が見られた。組織学的解析によると、ビスフェノールA、ノニルフェノール、p-オクチルフェノール、フタル酸ジブチルにドーパミン神経の発達阻害作用があることが分かった。

 これらの化学物質による脳での遺伝子発現を解析したところ、各化学物質で発現パターンは異なっていたが、8週齢のラットで、ドーパミン・トランスポーター1遺伝子とドーパミン受容体D4遺伝子の発現が上昇していた。ヒトADHD患者脳でも、これらの遺伝子の発現亢進が認められており、内分泌かく乱化学物質を注射されたラットと、ADHDの患者は分子レベルで類似している可能性がある。

 今回の結果は、母乳や食事に含まれる内分泌かく乱物質が脳神経の発達に悪影響を及ぼす可能性を示すものであるが、今後、産総研、環境研では、環境庁で「内分泌かく乱作用を有すると疑われる」とされた化学物質67種類の化合物全てについて、脳神経への作用を調べることを計画している。
# by saru3toru | 2004-08-26 09:08 | 科学情報

持久力2倍マラソンマウス 米韓が遺伝子操作で作製

 脂肪の燃焼にかかわる、あるタンパク質(PPAR-delta)の働きを遺伝子操作で高め、通常の2倍の距離を走り、しかも太りにくい“マラソンマウス”を誕生させることに成功したと、米ソーク研究所(カリフォルニア州)と韓国ソウル国立大のチームが23日、発表した。
 このタンパク質の機能を薬で高めることも可能とされ、飲むだけで運動をしたのと同じ効果が得られる薬の開発につながる成果だという。しかし、そんな薬ができたらきっとスポーツ選手の運動機能増強に悪用されるに違いない。でも、もしもその薬を使ったら、一回の大会で、筋肉はぼろぼろになって選手生命は断たれるだろうけど…。
Original news
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# by saru3toru | 2004-08-24 13:21 | 科学情報

文科省、民間企業で初めて国産ES細胞使用の研究を承認

 京都大学再生医科学研究所が樹立したヒト胚性幹細胞(ES細胞)株を、田辺製薬が研究に利用することにゴーサインが出た。8月23日の文部科学省科学技術・学術審議会の生命倫理・安全部会特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会で、追加申請が認められた。
 田辺製薬は、京都大学との共同研究で既に国の承認を得、オーストラリアMonash大学のヒトES細胞株を用いて、血管発生・分化機構の研究を進めている。国産のES細胞株を、企業が研究に用いるのは田辺製薬が初めてということである。
# by saru3toru | 2004-08-24 09:10 | 科学情報

トリインフルエンザのブタへの感染

トリインフルエンザのブタへの感染_b0013356_965852.jpgトリインフルエンザウイルスは既にアジアで2億羽以上の鳥を殺し、25人以上の犠牲者を出している。20日、北京で開かれた鳥インフルエンザ対策などに関する国際シンポジウムで中国農業省のChen Hualanは、2003年と2004年に中国のいくつかの農場で、高病原性のH5N1型ウイルスがブタに感染していることが確認されていることを報告した。
ブタはヒトインフルエンザにも感染することができるため、もしもブタがヒトインフルエンザウイルスとH5N1型トリインフルエンザウイルスに同時に感染すると、ブタの体内でウイルス遺伝子の組換えが起こり、ヒトに感染力がありH5N1型と同様の高病原性を持つインフルエンザウイルスが生み出される可能性がある。
もしかすると、トリインフルエンザがヒトの間で流行する日は思っているより近いのかもしれない。
# by saru3toru | 2004-08-24 09:05 | 科学情報

乳酸は運動に必要

 一般に、強い運動を続けると筋肉に乳酸がたまり、その結果筋肉に痛みを感じたり筋肉がつったりすると考えられている。
しかし、デンマーク、University of AarhusのOle Nielsenらは、乳酸は逆に筋肉が疲労して働けなくなるのを防ぐ役割があるという実験結果をサイエンスに報告した。
 強い収縮を繰り返すことにより、もともとは細胞内に高濃度に存在するカリウムイオンが細胞外に流出する。カリウムイオンが細胞外に流出すると筋肉の収縮能が低下するが、乳酸はこのカリウムイオン流出による収縮能の低下を抑える働きがあるらしい。
 運動選手が最高の運動能を発揮するのにウォーミングアップが必要なのは、ウォーミングアップにより筋肉に乳酸が蓄積することによるのかもしれない。
# by saru3toru | 2004-08-23 08:50 | 科学情報