蚊の幼虫の駆除に有用な標的蛋白質SCP-2を発見

 米国Wisconsin-Madison大学は、9月10日、マラリア、デング熱、ある種の脳炎、黄熱病、西ナイル熱などを媒介する蚊を駆除するための、新たな、より標的を定めた方法の開発において非常に有望な標的蛋白質、SCP-2を発見したと発表した
 通常、蚊の駆除には殺虫剤が用いられるが、殺虫剤は環境の他の生物にも害を与える可能性がある。蚊に特異的な殺虫法を捜していた、同大学の昆虫生理学者Que Lan氏らは、蚊のコレステロール代謝の特異性に注目した。コレステロールは、脊椎動物と非脊椎動物の細胞膜を構成する重要な成分だ。蚊は、発生、成長、卵形成にこれを必要とするが、ヒトとは異なり、コレステロール合成系を持たない。浅い水中で生活する幼虫期に、腐った植物を食べてフィトステロールを摂取する。フィトステロールは、蚊の腸でコレステロールに換わる。この過程を阻止すれば、ボウフラは死ぬはずだ。
 研究者たちは、ネッタイシマカ(Aedes asgypti)を用いて、コレステロールを蚊の細胞に運ぶために必須の蛋白質AeSCP-2を発見した。AeSCP-2は、ステロール運搬蛋白質で、疎水性のコレステロールを血液や細胞液などの液体中を運ぶ際にシールドとして機能する。この蛋白質の作用を阻害する蛋白質を捜すために、氏らは16000の化合物をスクリーニングし、SCP-2のコレステロール結合能力を阻害できる化合物を57個選出した。上位5つの化合物を蚊の幼虫に用いたところ、いずれも幼虫を殺すことができた。効果は用量に依存し、使用濃度が高ければより多くの幼虫が死んだ。が、その濃度は最高でも10ppmだった。氏らは現在、SCP-2阻害化合物の、多様な昆虫や脊椎動物に対する作用を調べている。マウスの細胞を対象とした場合には、5つの化合物のうち3つは無毒で、残りの2つもわずかな毒性しか持っていなかったという。さらに、ハエ、ゴキブリ、シロアリ等の害虫を対象とする評価も行っている。環境試験や分解試験はこれから行われるが、残留時間が2-3週と短いものが理想だと氏はいう。
 氏は「耐性昆虫の出現や他の生物への影響を防ぐためには、1種類の昆虫にのみ有効で、効果が短期間で消える化合物を捜し出すことが重要だ」と述べた。
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# by saru3toru | 2004-09-17 10:22 | 科学情報

好酸球がぜんそく治療のターゲット

 米Mayo Clinicの研究者を中心とした研究グループと米Harvard Medical Schoolの研究グループは、それぞれ好酸球を欠損させたマウスを用いた実験で、抗酸球がぜんそくで重要な役割を果たしていることを示した。
 好酸球がぜんそく患者の気道に多く存在することや、アレルゲンによる呼吸器炎症を引き起こす動物モデルで、好酸球が気道に誘導される実験などから、好酸球がぜんそくに関与していることは示唆されていたが、臨床試験結果やマウスのぜんそくモデルからは、好酸球のぜんそくにおける機能は明確にはされていなかった。今回示された動物実験の結果は、改めて、好酸球を標的にしたぜんそく薬の可能性を示したことになる。成果は、Science誌9月17日号に掲載された。

 Mayo Clinicの研究グループは、好酸球遺伝子をノックアウトしたマウスを作製、アレルゲンとしてオボアルブミンを投与した。 その結果、ノックアウト・マウスでは、気道に過敏症や粘液の過剰分泌といったぜんそくの症状が起こらず、これらの反応に抗酸球が不可欠であることが確認された。

 一方、Harvard Medical Schoolのグループは、Mayoとは別の系統のマウスで、好酸球の機能をなくしたマウスを利用し、同様にオボアルブミンを投与して、反応を調べた。GATA-1プロモーターのGATA領域に対する高い親和性をなくすことで、好酸球を欠除させたマウスを利用した。実験の結果、気道の過敏症、粘液の分泌は野生型と同様に起こったものの、気道のリモデリングは起こらなかった。つまり、好酸球は気道のリモデリングには関係するが、アレルゲンによる肺機能の低下には必須ではないことになる。
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# by saru3toru | 2004-09-17 10:19 | 科学情報

恐竜が子育て中? 中国で親子密集化石

b0013356_947916.jpg 恐竜の成体1匹と子ども34匹が密集している化石が、中国・遼寧省西部で発見された。詳しく調べた米中などの研究チームは、親が巣で子育てをしていた現場の可能性が高いとみている。9日付の英科学誌ネイチャーに発表された。

 化石は白亜紀前期(1億3000万年前ごろ)の地層から03年に見つかった。小型草食恐竜プシッタコサウルスの仲間で、計35匹の化石が0.5平方メートルの範囲に集まっていた。子どもはいずれもほぼ同じ大きさで、腹ばいにうずくまって頭を少し上げる姿勢だったことなどから、研究チームは、別々に暮らしていた恐竜が死後に流されて1カ所に集まったのでなく、巣にいた親子がそのまま生き埋めになったと推測している。
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# by saru3toru | 2004-09-09 09:47 | 科学情報

Smacと同じ働きをしてがん細胞を殺す低分子化合物

 University of TxasのHarranらは、がん細胞をより選択的に殺すことのできる低分子化合物を見出した。

 体内で細胞は必要に応じて自ら死ぬことを命じられる。しかし、細胞の細胞質にはInhibitor of apoptosis proteinという蛋白質があり、細胞がアポトーシスを起こしてむやみに死んでしまうのを防いでいる。アポトーシスが必要とされるときには外からのシグナルに応じてミトコンドリアからSmacと呼ばれる蛋白質が放出され、SmacはIAPと結合することによりIAPの機能を阻害し、アポトーシスが誘導される。

 HarranらはこのSmacと同じ機能を有する低分子化合物をスクリーニングにより見出し、それが実際にがん細胞のアポトーシスを引き起こすことを明らかにした。
 これはこれまでの抗がん剤にはないメカニズムであり、よりがん細胞に特異的に作用する可能性があり、副作用の少ない抗がん剤の発見に結びつく可能性がある。

 この結果は9月3日のサイエンスに報告された。
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# by saru3toru | 2004-09-07 09:25 | 科学情報

皮膚に存在する幹細胞を使って毛髪再生

 ロックフェラー大学のFuchsらは、大人のマウスの皮膚から幹細胞を単離し、単一の幹細胞から多種類の上皮系細胞が分化することを見出した。また、幹細胞由来の細胞をヌードマウスの皮膚に移植することにより、通常のマウスと同様に毛の生えた皮膚を作り出すことに成功した。
 この結果は人間でも自分の皮膚から幹細胞を単離し、それを正常な皮膚になる細胞へと実験室で分化させることにより、ハゲの治療や火傷の治療などに応用できる可能性をを示すものである。
 さらに幹細胞を利用することにより他の組織の上皮系の細胞、たとえば目の角膜や歯のエナメルなどを再生させることも可能であるかもしれない。
 この結果は2004年、9月3日号のCellに報告された。
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# by saru3toru | 2004-09-07 09:07 | 科学情報